日比谷通り日比谷公園向かいの工事現場の仮囲いに壁画としてプリントされました。
作品名 :“and we are―HIBIYA”(『そして私たちは日比谷にいる』)

作品を一望できない細長い空間を活かして、絵巻物のような水平に長く続く作品を制作しました。
観る人は歩道を歩きながら絵画の空間を端から端まで旅することになります。
立ち止まってみれば、其処彼処でちがう景色が広がります。
私にとって創造とは、頭の中で完成されたイメージを再現することではありません。
作品との対話のなかで流動的に育っていくプロセスが、イメージを完成させるものだと考えます。
絵の具の滲みがどうあがってくるかは絵の具が完全に乾いてみないとわかりません。
浮かび上がってくる絵の具の形象から、また次の展開が見えてくる。
そのような繰り返しが織りなって、作品との対話の中から物語が生まれてくる、それが私の制作のプロセスです。
ある登山家はこう言っています。自分は登頂することに感動するのではなく、人跡未踏の岩壁と向き合い、そこに自分が初めて登頂への道筋をつけることに高揚するのだと。
さらに天候、気温、そして風の動きなどによって絶えず変動する状況をからだの五感すべてを使って察知し、知識と冷静な判断力と駆使して次なるステップを決断していく——そのプロセスこそが山登りの醍醐味だと。
この作品のテーマは「未知の世界への冒険」です。人生にはそこに辿り着いてはじめて見える風景があります。
からだのすべての感性を研ぎすまし、知識と情熱を持って突き進む、そして辿り着いた先には、今まで観たこともないような美しい景色が広がっているのです。

堂本右美

このたび日比谷通り沿いの仮囲いの壁画制作を画家の堂本右美さんにお願いしました。
日比谷通りの反対側に広がる日比谷公園と日比谷の街との対話が生まれる壁画、というテーマ設定です。
日比谷公園は大都会のなかにあって自然が豊かな空間です。
自然は季節とともに、そして一日のなかでも常に変化します。
公園のうえに広がる空は時と共に色をかえ、木々は光を受けて輝き、
時には雨にくもり、さまざまな表情を見せます。
その公園に面した仮囲いの壁画の前を通ると、公園を取り巻く空や木々が変化していくように、
絵の中の光景もさまざまに展開して行きます。
堂本さんの絵の中には自然があります。絵の中の自然、変幻する光景は画家の感性が未知の世界をすすむことで生まれてくるものであり、感動的な自然のリズムが隠されています。
壁画の前を通れば、自然と絵画が共鳴しあい、日比谷の街にこれまでなかった新しい風景がうまれていることに気づくことでしょう。

アーティスティックディレクター:清水敏男

展示場所:新日比谷プロジェクト仮囲い
アクセス:東京メトロ日比谷駅 A12・ A11 出口 目の前(日生劇場並び)